非常用発電機 負荷運転

人命とライフラインを守る自家発電機の出力確認点検は
ユーザー(設置者)の義務です

消防法における非常用発電機負荷運転の規定が改訂されました。

消防予第372号
「消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式の一部を改正する件の公布について」
消防予第373号
「消防用設備等の点検要領の一部改正について(通知)」
消防庁作成リーフレット
自家発電設備の点検改正に伴うリーフレット
内部観察とは?
予防的な保全策とは?
新点検票書式
別記様式第24 非常電源(自家発電設備)点検票

本告示による負荷運転義務の改訂内容

発動機種別負荷運転義務
改正後改正前
ディーゼル発電機
※1 一定の条件を満たした場合は6年周期で可。
※2 負荷運転の代替点検方法として内部観察を選択可。
ガスタービン発電機

※1 負荷運転周期延長(最長で6年に1回)の条件

負荷運転周期延長の条件として、改正された点検要領には「運転性能の維持に係る予防的な保全策が講じられている場合」と定められています。
では予防的な保全策とは具体的にどのような内容でしょうか。
下記の別添1(左)、別添2(右)として以下の項目が示されています。
併せて消防庁作成のリーフレットもご覧ください。→ 予防的な保全策とは?

(別添2)
「運転性能の維持に係る予防的な保全策」
運転性能の維持に係る予防的な保全策とは、1に掲げる項目を1年ごとに確認し、かつ、2に掲げる部品を標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間として設計上設定される期間(製造者が設定する推奨交換期間等)以内に交換することをいう。
1 確認すべき項目
(1)自家発電設備に予熱栓が設けられている場合
予熱栓の発熱部に断線、変形、絶縁不良等がないこと。
(2)自家発電設備に点火栓が設けられている場合
ア 電極の異常な消耗がないこと。
イ プラグギャップ値が製造者の指定値範囲内であること。
ウ 異常なカーボンの付着がないこと。
(3)自家発電設備に冷却水ヒータが設けられている場合
ア 冷却水ヒータケース外周又は近傍の配管等に触れ、その他の部位より温度が高いことを確認すること。
イ テスタにて冷却水ヒータの断線等の有無を確認すること。
(4)自家発電設備に潤滑油プライミングポンプが設けられている場合潤滑油プライミングポンプが正常に作動していることを確認すること。
2 交換すべき部品
(1)潤滑油
(2)冷却水
(3)燃料フィルター
(4)潤滑油フィルター
(5)ファン駆動用Vベルト
(6)冷却水用等のゴムホース
(7)燃料、冷却水、潤滑油、給気、排気系統や外箱等に用いられるシール材
(8)始動用の蓄電池

※2 負荷運転に代わる内部観察

従来の負荷運転に代わる手段として内部観察が新たに規定されました。点検要領中に以下の通り定められています。
併せて消防庁作成のリーフレットもご覧ください。→ 内部観察とは?


                         
過給機を取り外し、コンプレッサ翼及びタービン翼並びに排気管内部等を観察する。過給機が付いていない場合は、排気管に接続されている可とう管継ぎ手等を取り外して排気管内部等を確認する。ア コンプレッサ翼及びタービン翼に運転に支障を及ぼすじんあいや燃焼残さ物等が付着していないこと。
イ コンプレッサ翼及びタービン翼に損傷や欠損がないこと。
ウ 排気管や排気ダクトの内部に運転に支障を及ぼす未燃燃料や燃焼残さ物等が付着していないこと。
※異常がある場合には清掃等により除去すること。
燃料噴射弁を取り外し、作動させて、噴射状態、噴射圧力を確認する。燃料噴射弁の試験器を用いて以下を確認すること。
ア 燃料噴射弁の開弁圧力が製造者の指定値範囲内であること。
イ 噴口に詰りがなく、燃料噴霧が均一で微細に霧化されていること。
ウ 燃料噴射弁先端から液垂れがないこと。
※異常がある場合には開弁圧力の調整、清掃等を行うこと。
シリンダヘッド又は燃料噴射弁を取り外し、シリンダ摺動面等の内部を確認する(燃料噴射弁を取り外して確認する場合は、内視鏡等を用いる)。シリンダライナ摺動面に運転に支障を及ぼす損傷や摩耗がないこと。
オイルパン等から潤滑油を必要量抜き取り、潤滑油の成分に異常のないことを確認する。「動粘度」、「燃料希釈分」、「塩基価」、「金属成分」、「水分」等が、製造者の指定値範囲内であること。
※指定値範囲外の項目がある場合には、異常がある部位に清掃、修理、交換等の必要な措置を講ずること。
冷却水ドレインコック等から、冷却水を必要量抜き取り、冷却水の成分に異常のないことを確認する。(水冷式内燃機関に限る。)「PH(ペーハー)」、「全硬度」、「電気伝導率」、「蒸発残留物」等が、製造者の指定値範囲内であること。
※指定値範囲外の項目がある場合には、異常がある部位に清掃、修理、交換等の必要な措置を講ずること。

非常用発電機の負荷運転について

非常用発電機の定期総合点検の義務
<なぜ出力確認の負荷運転点検が必要なのか>

1.消防法では、負荷運転の点検義務が有ります

消防法で定められている負荷運転は、電気事業法の月次点検とは異なり、消火活動に必要なスプリンクラーや消火栓ポンプを動かす為に必要な出力確認の点検です。


自家発電設備の定格出力が、加圧送水装置の出力を上回っていなければ、スプリンクラーや消火栓は稼動せず、消火活動が出来ません。

二次災害は施設所有者及び管理者の責任です
(消防法・両罰規定第45条第3号)

2.なぜ30%以上の負荷運転が必要なのか

月次点検等で行なっている無負荷(空ふかし)運転点検だけを行っていると、エンジン内にカーボンが堆積されます。
その為、1年に1回は、30%以上の負荷運転を行い、堆積されたカーボンを燃焼排出させておかなければ、非常時に発電機が正常に動かず、消火活動が出来なくなる怖れがあります。


≪負荷運転機によるカーボン燃焼排出の点検≫

【出力確認の負荷運転】

  • 黒煙状態を見ながら、負荷を5% ~ 20%迄少しずつかけていく。
  • 負荷を30%迄上げて、30分間運転状態を見る。
  • 10%、20%、30%出力毎に、電圧、電流の測定を行う。

3.負荷運転済証の発行

アウトバウンドが行う非常用発電機の負荷運転では、経験豊富な技術スタッフのもと負荷運転を行い、試験済証(シール)を貼らせていただきます。定期点検の際に試験証を更新し、非常用発電機を安心して運用していただけます。


▼下記のホームページでご確認下さい
総務省消防庁のホームページ

     (39項目参照)

負荷運転〈消防予第214号-第24-3総合点検ホームページより抜粋〉(39項目)

運転状況疑似負荷運転装置、実負荷等により、定格回転速度及び
定格出力の30%以上の負荷で必要な時間連続運転を行い
確認する。
ア 運転中に漏油、異臭、不規則音、異常な振動、発熱等がなく、運転が正常であること。

イ 運転中の記録はすべて製造者の指定値範囲であること。
 ※(ア)擬似負荷装置の設置については、容量、設置場所、仮設給排水方法、
   仮設ケーブル敷設、危険標識設置、監視員の配置等について、
   電気主任技術者及び防火管理者と十分打合せを行なって実施すること。
 (イ)負荷運転前の確認事項
  負荷運転前に、設備全般にわたり次の事項を確認すること。
 a 機器点検における始動試験の始動前の確認事項
 b 原動機と発電機のカップリング部のボルト、ナットに緩みがなく、
  フレキシブルカップリングの緩衝用ゴムにひび割れ等の損傷がないこと。
 c 原動機潤滑油の汚損がないことをオイル試験紙等で確認すること。
 d 吸排気弁の開閉時期及び燃料噴射時期が製造者の指定値範囲であること。
 e 燃料噴射弁の噴射状態が正常で、噴射圧力が製造者の指定値範囲であること。
 f 燃料及び潤滑油こし器に異常なごみ、金属粉等のたい積がなく、損傷、変形等がないこと。
 g 予熱栓の発熱部に断線、変形、絶縁不良等がないこと。
 h 点火栓に変形、損傷、絶縁不良等がないこと。
 i 継電器の本体、ケース、コイル、内部配線及び部品の損傷、主接点及び補助接点に
  接触不良、接点荒れ等の異常、円板と磁石間にじんあい、鉄粉等の付着がないこと。
 (ウ)負荷運転後の確認事項
 a 負荷運転の終了後は、スイッチ、ハンドル、弁等の位置が自動始動運転待機状態になっていることを
  確認すること。
 b 消費した燃料、冷却水が補給されることを確認すること。
ケース別負荷運転(内部観察)義務の有無
消防予第372号より該当箇所を抜粋
過去の負荷運転実施歴有無過去に負荷運転を実施したことが有る場合過去に負荷運転を実施したことが無い場合
新規定による取り扱い平成29年6月以降に現行規定に基づく負荷運転を実施している非常電源(自家発電設備)については、運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じることにより、当該負荷運転を実施してから6年を経過するまでの間は、改正告示による改正後の昭和50年消防庁告示第14号(中略)別表第24第2項(6)に規定する運転性能に係る点検を実施しないことができること。
 ただし、平成29年5月以前に現行規定に基づく負荷運転を実施している非常電源(自家発電設備)にあっても、当該負荷運転を実施して以降、運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じていたことが過去の記録等により確認できるものに限り、当該負荷運転を実施してから6年を経過するまでの間は、点検基準別表第24第2項(6)に規定する運転性能に係る点検を実施しないことができること。
 平成29年6月以降に製造された非常電源(自家発電設備)については、運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じることにより、製造年から6年を経過するまでの間は、点検基準別第24第2項(6)に規定する運転性能に係る点検を実施しないことができること。
 ただし、平成29年5月以前に製造された非常電源(自家発電設備)にあっても、製造年以降、運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じていたことが過去の記録等により確認できるものに限り、製造年から6年を経過するまでの間は、点検基準別表第24第2項(6)に規定する運転性能に係る点検を実施しないことができること。
記をまとめると、製造から6年未満であったり、前回の負荷運転から6年を経過していないものであっても、今回の改訂で規定された点検整備(潤滑油、冷却水交換等)を過去に遡り毎年実施していることが書面にて確認できない場合には、負荷運転もしくは内部観察の義務が生じることとなります。製造から1年未満、または前回の負荷運転から1年未満の場合、この限りではありません。
また、今後負荷運転もしくは内部観察を実施した場合は翌年以降毎年、上記指定の点検整備を実施することにより最長5年間負荷運転もしくは内部観察が免除されます(負荷運転もしくは内部観察実施周期は6年)。

個別の事例でどのように対応すればよいかご不明な場合はお気軽に当社へご相談ください。
点検・整備不良の事例
先の東日本大震災では、燃料切れや津波等を除いて、非常用自家発電設備の機能を十分に発揮できなかった不具合の多くが、
点検・整備不足に起因するものでした。
保全に関する法令の基準
法令による点検基準の概要
関連法対象物点検の内容点検
期間報告基準
電気事業法電気工作物日常巡視
日常点検
定期点検
精密点検
保安規定による---保安規定
建築基準法特定行政庁が指定するもの外観検査
性能検査
特定行政庁が定める期間
(おおむね6ヶ月から1年に1回)
特定行政庁
(おおむね6ヶ月から1年に1回)
建築設備の検査の方法及び判定基準(告示)
消防法・特定防火対象物又は非特定防火対象部で、法令で定められているもの

・特定一段階防火対象物
機器点検
総合点検
6ヶ月(機器点検)及び1年(総合点検)消防機関1年に1回(特定防火対象物)

消防機関3年に1回(上記以外の防火対象物)
点検基準(告示)

点検要領(通知)
上記以外の防火対象物
法令による罰則等
電気事業法技術基準に適合していないと認められる発電設備の設置者(電気事業法第40条)技術基準への適合命令又は使用制限
建築基準法検査報告をしない者又は虚偽の報告をした者(建築基準法101条)100万円以下の罰金
消防法点検報告をしない者又は虚偽の報告をした者(消防法第44条11号)30万円以下の罰金又は拘留
上記従業者等の法人(消防法第45条3号)

発電設備が技術基準に適合していなかったり、法令点検が行なわれていない場合は、罰則等が科せられます。




法 令点検期間点検内容基準
消防法1年に1回の
総合機能点検
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、
非常用発電機設備等が十分に機能するかを実際に確認
点検要領
(通知)
非常用発電機は30%以上の運転性能
罰則規定30万円以下の罰金又は拘留 (消防法 第44条11号・第45条3号)点検報告をしない者・
又は虚偽の報告をした者

4.電気事業法と消防法の非常用発電機点検について

【電気事業法の点検】

点検内容点検業者
月次電気点検と
起動運転(無負荷)
・電気系統の正常作動確認
・受変電設備
・発電機等の起動運転(約5分)
(出力確認の消防法の点検ではありません・無負荷運転)
電機設備点検業者

【消防法の点検】

点検内容点検業者
26ヶ月に1回の
機器点検
・消火器 ・火災報知器
・避難器具・ガス漏れ警報器
・誘導灯等の防災設備等の主に目視点検
消防点検業者
3年1回の
総合点検
・消火器 ・火災報知器
・避難器具・ガス漏れ警報器
・誘導灯等の防災設備等の機能点検
4 年1回の運転性能点検 負荷運転
①運転性能
バッテリー・ファンベルト・オイル・フライミング操作及び黒煙等の点検 (約15分)
②負荷運転機を接続して30%以上の出力確認点検 (30分)
③出力データ作成(別表参照)

内部観察等
出力負荷点検業者


非常用発電機負荷運転のオペレーション



非常用発電機負荷運転作業現場